人件費を英語で?【海外で役に立つ会計英語をカンタン解説】

たぬき

人件費って英語でなんていうんだろう?


tanuki

人件費の英語表現には色んな言い方があります。例えば、「Staff costs」「Payroll」「Labour costs」がそうです。
この記事では、一般的に使われる人件費の英訳の他に、以下について解説していきます。

本記事の内容
  • 人件費の帳簿の付け方
  • 人件費の内訳
  • 決算書での人件費の開示例

本記事を書いている私のカンタンな自己紹介は以下のとおりです。

たぬきの経歴
【2011年】アメリカの大学卒業後、USCPA試験に合格。
【2012年】シンガポールの中堅監査法人に就職し、中小~上場企業の監査を担当。
【2015年】会計記帳サービスを中心としたバックオフィス業務を提供するシンガポールの別会社へ転職し、現在に至る。

人件費を英語でいうと?

人件費を英語でいうと?

人件費の英訳には色々あり、一般的によく使われるのは以下のとおりです。

人件費の英訳(カタカナ発音)
  • labour/labor costs(レイバー コスト)【英語:labour、米語:labor】
  • personnel expenses(パーソネル エクスペンス)
  • employment costs(エンプロイメント コスト)
  • manpower costs(マンパワー コスト)
  • payroll costs(ペイロール コスト)
  • staff costs(スタッフ コスト)

※この記事では、なんとなくでも読めるようにカッコ内にカタカナでの読みを入れています。すべて単数形の発音ですので、厳密に正しい発音ではありませんm(_ _)m

ビジネス英会話では「personnel expenses」「payroll costs」「staff costs」がよく使われます。会計学では「payroll costs」がよく使われ、「labour/labor costs」は製造業の労務費を指す場合が多いです。

「manpower costs」「employment costs」も人件費という意味なのですが、他と比べると使われる頻度は少ないです。

人件費に関連する英語

まずは人件費の内訳の日本語&英語をご紹介します。用語の英語訳だけが知りたい場合には、以下の表だけで十分だと思います。

日本語英語(カタカナ発音)
賃金Wages(ウェイジ)
給料Salaries(サラリー)
社会保険料Social security contributions(ソーシャル セキュリティ コントリビューション)
有給年次休暇Paid annual leave(ペイド アニュアル リーブ)
有給病気休暇Paid sick leave(ペイド シック リーブ)
利益分配Profit-sharing(プロフィット シェアリング)
賞与・ボーナスBonuses(ボーナス)
医療手当Medical care allowance(メディカル ケア アラーワンス)
住宅手当Housing allowance(ハウジング アラーワンス)
通勤手当Commuting allowance(コミューティング アラーワンス)
年金Pensions(ペンション)
退職一時金Lump sum payments on retirement(ランプ サム ペイメント オン リタイアメント)
生命保険Life insurance(ライフ インシュアランス)
長期勤続休暇Long-service leave(ロング サービス リーブ)
研修/研究休暇Sabbatical leave(サバティカル リーブ)
記念日休暇
(会社の創立記念日など)
Jubilee leave(ジュビリー リーブ)
長期勤続給付Long-service benefits(ロング サービス ベネフィット)
長期障害給付Long-term disability benefits(ロング ターム ディサビリティ ベネフィット)
解雇給付Termination benefits(ターミネーション ベネフィット)
役員報酬Directors’ remuneration(ダイレクターズ レミュネレーション)
雑給Other salaries(アザー サラリー)
福利厚生費Welfare expenses(ウェルフェア エクスペンス)
人件費に関連する英語

次は人件費の会計的な解説に移ります。

tanuki

ここから先は英文会計の話になるので、少し難しくなります。英文会計の基礎を知りたい場合は、まずは以下の記事をぜひご覧ください。
>>【【英文会計入門】海外で経理として働くための知識を解説】

人件費の帳簿の付け方

人件費は損益計算書(Profit or loss/PL)に出てくる費用です。

下の図はシンプルなPLですが、人件費はDr.(貸し方)である費用に記帳されるので、その分費用が増えることになります。結果的に利益を減らすことにつながります。

複式簿記でみると、以下のようになります。

【月末にその月の人件費を帳簿に記録】
Dr. Payroll costs(人件費)
Cr. Other payables(未払金)

【翌月5日に前月の人件費を支払い】
Dr. Other payables(未払金)
Cr. Cash and cash equivalents(現金及び現金同等物)

(Dr.=貸し方、Cr.=借り方)
実際には、Payroll costsだけで記帳することはなく、「給料」「賞与」「手当」などに分けて記帳します。

会計基準における人件費の定義

人件費に含まれる費用の代表例として、給料や賃金がありますが、人件費に含まれるのはこれだけではありません。
他にも人件費に含まれる項目の例として、賞与、手当、退職給付などがあります。

シンガポール会計基準(SFRS)では、これらの費用を含めて人件費のことを「Employee benefits(エンプロイー ベネフィット)」といいます。「従業員給付」という意味です。

このEmployee benefitsに含まれる項目については、シンガポール会計基準に明記されています。
従業員給付に含まれるのは、大きく分けて以下の4つになります。

従業員給付に含まれる4つ
  1. 短期従業員給付
  2. 退職後給付
  3. その他長期従業員給付
  4. 解雇給付
これだけ見てもまだ分かりにくいと思うので、もう少し噛み砕いて見ていきましょう。

少し長いですが、まずはシンガポール会計基準からの引用です。

Employee benefits include:
(a) short-term employee benefits, such as the following, if expected to be settled wholly before twelve months after the end of the annual reporting period in which the employees render the related services:(i) wages, salaries and social security contributions;(ii) paid annual leave and paid sick leave;(iii) profit-sharing and bonuses; and(iv) non-monetary benefits (such as medical care, housing, cars and free or subsidised goods or services) for current employees;

(b) post-employment benefits, such as the following:(i) retirement benefits (eg pensions and lump sum payments on retirement); and(ii) other post-employment benefits, such as post-employment life insurance and post-employment medical care;

(c) other long-term employee benefits, such as the following:(i) long-term paid absences such as long-service leave or sabbatical leave;(ii) jubilee or other long-service benefits; and(iii) long-term disability benefits; and

(d) termination benefits.

SFRS(I) 1-19 Employee Benefits

これを日本語訳してまとめると、

従業員給付に含まれるものは、
(a) 短期従業員給付(従業員が労働してから12ヶ月以内にその対価として全額支払われると予想されるもの)
(i) 賃金、給料、社会保険料
(ii) 有給の年次休暇、有給の病気休暇
(iii) 利益分配、賞与(ボーナス)
(iv) 非金銭的給付(例:医療手当、住宅手当、通勤手当、無料で受ける商品やサービス)
→現在働いてくれている従業員に与える給料や有給休暇。

(b) 退職後給付
(i) 退職給付(例:年金、退職一時金)
(ii) その他退職後給付(例:生命保険料、医療費)
→退職した従業員に与える給付。退職後の年金や医療費など。

(c) その他長期従業員給付
(i) 長期勤続休暇、研修/研究休暇
(ii) 記念日休暇、長期勤続給付
(iii) 長期障害給付金
→長期で働いてくれている従業員に与える給付。

(d) 解雇給付
→解雇した従業員に与える給付。
また、従業員の家族に与えられる手当も従業員給付に含まれます。医療保険はその主な例です。

決算書での人件費の開示方法

決算書での人件費の開示方法
ここからは実際の決算書では、人件費がどのように開示されているのかをご紹介します。

前述しましたが、人件費はPLに出てくる費用ですので、まずはPLを見ていきます。
Big4監査法人の一つであるPwCが公表している決算書の実例で確認していきましょう。

一般的には人件費は赤で囲っている「Administrative(アドミニストレイティブ)」に含まれます。Administrativeの意味は「管理」ですので、人件費は管理費に含まれるということです。

※厳密にいうと、すべての人件費は管理費に入るわけではありません。詳細については、ここでは割愛します。
Administrativeの内訳はNote 5(注記5)で開示されているので、そちらを見ていきましょう。

上の画像は注記5の「Expenses by nature(エクスペンス バイ ネイチャー)」といいます。
Expenses by natureとは「性質別費用」という意味で、ここには売上原価や販管費などのほぼ全ての費用が開示されています。

この中で人件費に該当するものは赤で囲っている「Employee compensation(エンプロイー コンペンセーション)」です。
Employee compensationの意味は、「従業員報酬」になります。

このEmployee compensationの横に注記6と記載されているので、さらに深堀りするために、そちらも見ていきましょう。
上の画像は注記6のEmployee compensationです。

ここでようやく人件費の内訳が開示されています。日本語訳は以下のとおりです。
英語(カタカナ発音)日本語
Wages and salaries(ウェイジ アンド サラリー)給料と賃金
Employer’s contribution to defined contribution plans(エンプロイヤーズ コントリビューション トゥー ディファインド コントリビューション プラン)確定拠出年金への雇用者拠出金*
Termination benefits(ターミネーション ベネフィット)解雇給付
Other long-term benefits(アザー ロング ターム ベネフィット)その他長期給付
Share option expense(シェア オプション エクスペンス)ストックオプション費用
【補足】
*「確定拠出年金への雇用者拠出金」とは、会社負担で支払う従業員の年金のことです。シンガポールでは55歳以下の従業員に対して、給料の17%を政府の確定拠出年金(CPF(Central Provident Fund))へ支払います。従業員の年齢が55歳より上になると、支払う確定拠出年金の%は下がっていきます。

【おまけ】決算書では経営陣の人件費は別の注記で開示される

上で紹介した注記6「Employee compensation」で人件費の内訳はすべて開示されているのですが、経営陣の人件費は「Related party transactions(リレイテッド パーティ トランザクション)」という別の注記で開示されます。

「Related party transactions」の意味は、「関連当事者取引」になります。
「Related party transactions」の注記では、グループ会社間の取引が開示されます。経営陣も関連当事者ということで、経営陣の人件費が開示されます。

決算書での開示例は以下のようになります。
注記6「Employee compensation」と注記44「Related party transactions」を見比べてみると、人件費の総額に対して経営陣の人件費がどのくらいかかっているのか?が分かります。

まとめ

まとめ
本記事のまとめ
  • 人件費を英語でいうと、以下のように様々な表現がある。
    • labour/labor costs(レイバーコスト)【英語:labour、米語:Labor】
    • personnel expenses(パーソネルエクスペンス)
    • employment costs(エンプロイメントコスト)
    • manpower costs(マンパワーコスト)
    • payroll costs(ペイロールコスト)
    • staff costs(スタッフコスト)
  • 人件費はPLに出てくる費用。人件費が増えるとその分利益が減る。
  • 人件費の内訳
    • 人件費は会計基準の定義だと「従業員給付」という。
    • 主な内訳としては次の4つ。①短期従業員給付(給料、有給休暇)②退職後給付(年金、退職後の医療費)③長期従業員給付(長期勤続休暇、長期障害給付金)④解雇給付
  • 決算書での人件費の開示例
    • PL(損益計算書)→Expenses by nature(性質別費用)→Employee compensation(従業員報酬)→Related party transactions(関連当事者取引)の順番で開示例を紹介しました。
人件費に関わる英語表現は色々あるので、今回ご紹介したものはボリューム満点の内容だったかもしれません。

単純に人件費を英語で使うときは、「personnel expenses」「payroll costs」「staff costs」のどれかを使えば問題ないです。

今回は人件費の英訳・内訳について解説しましたが、会計用語の英訳をいつでもカンタンに確認したい場合には、以下の本がオススメです。
会計に関する英単語がこの1冊にまとめてあるので、手元にあると便利です。興味があればご覧になってください。