

大手監査法人(ビッグ4監査法人)じゃなくて中小監査法人での就職ってどうなんだろう?中小監査法人に就職するメリット、デメリットを知りたいな。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。
本記事の内容は、
・シンガポール監査法人の紹介
・中小監査法人に就職するメリット、デメリット
・中小監査法人に就職した後のキャリア
本記事を書いている私の経歴を簡単に説明します。
・新卒でシンガポールの中堅監査法人に就職。3年間ほど勤務。
・その後転職し、現在はシンガポールで経理関連の業務を中心にバックオフィスの仕事。
私がシンガポールの監査法人で経験したことをもとに解説します。
目次
シンガポールの監査法人を紹介

まず初めに、シンガポールにはどんな監査法人があるのかを簡単にご紹介します。
※本記事で指す「中小監査法人」は、便宜上ビッグ4監査法人(KPMG, PwC, EY, Deloitte)以外の監査法人のことを指すことにします。
ランキング | 監査法人名 | 従業員数 |
---|---|---|
1 | PwC | 3,700 |
2 | EY | 3,500 |
3 | KPMG | 3,160 |
4 | Deloitte | 2,900 |
5 | RSM | 1,000 |
6 | BDO | 560 |
7 | Baker Tilly | 315 |
8 | Foo Kon Tan | 290 |
9 | Nexia | 265 |
10 | Mazars | 245 |
11 | Crowe Horwath | 240 |
12 | Moore Stephens | 215 |
13 | Kreston Ardent CAtrust | 168 |
14 | RT | 140 |
15 | PKF-CAP | 115 |
16 | UHY Lee Seng Chan & Co. | 108 |
17 | Lo Hock Ling & Co. | 95 |
18 | Audit Alliance | 94 |
19 | Grant Thornton | 94 |
20 | HLB-Atrede | 93 |
21 | Cypress Singapore | 89 |
22 | Precursor Assurance | 80 |
23 | BSL Group | 72 |
24 | Fiducia | 60 |
25 | Heng Lee Seng | 60 |
26 | Robert Yam & Co. | 57 |
27 | Helmi Talib & Co. | 56 |
28 | Infinity Assurance | 53 |
29 | Reanda Adept | 52 |
30 | Kreston David Yeung | 46 |
上の表は、2020年8月時点で判明しているランキングになります。
この上位4つの監査法人は毎年変わりません。流石ですね。
中小監査法人に就職するメリット

メリット1:会社という仕組みの全体像を見れる機会が早い
大手監査法人だとアシスタントの時は、シニアスタッフから言われた箇所(アシスタントにもできる簡単なところ)をまずは担当することになると思います。
これは書類の確認などがメインなので、書類を通して会社の活動の一部という、ジグソーパズルの1パーツのみを見ているような感じです。
ですが、人手が足りない中小監査法人はアシスタントの時から1社をまるごと監査を担当することになります。
つまり、ジグソーパズルを一から完成させるまでの過程を全てを一人でやることになります。
アシスタントの時に小さいクライアントを担当し、書類や数字のチェック、担当者への質問などを最初から最後まで一人でやることで「会社とはどのような流れで事業をしているのか?」を把握することができます。
もちろんアシスタントがやった監査の最後にはマネージャーにチェックが入りますので、監査の品質はマネージャーのチェックで補完されます。
アシスタントの段階から監査を一人で担当することで、クライアントの会社全体を把握できる機会を持てるのは、早く成長できるチャンスです。
メリット2:早くから色々なことを経験できる
メリット1にもつながることですが、入社して1年目のアシスタントの頃から幅広い業務を経験することになります。
クライアントの会社規模は中小ですが、監査を一人でやるので、
・監査計画を立てる
・監査するにあたってのリスク設定
・数字の分析
・監査アプローチの選定
など、シニアスタッフが行うようなこともアシスタントの段階から経験することになります。
入社するタイミングにもよりますが、2年、3年目になると上場企業を担当するシニアスタッフとなるので、チームを率いることになります。
つまり、アシスタントを指導しながら、期限に間に合うように監査を進める必要があるため、
・後輩の指導力
・コミュニケーションスキル
・計画性
なども、現場で学んでいくことになります。
私が以前いた監査法人は中堅クラスでしたが、常に人手が足りていないため、一つのクライアントの監査が終わると、すぐに次のクライアントの監査が始まったり、時には同時進行で監査を行っていたりしていました。
休む暇もなく毎日を過ごしていましたが、おかげで短期間で色んな経験を積めたので、一気にレベルアップしたのは感じました。
というより、一人で監査をやらなければいけなかったので、自分でも勉強してレベルアップしないと不安でやっていけませんでした。笑
中小監査法人に就職するデメリット

デメリット1:給与金額
予想されてると思いますが、中小監査法人の平均給与額は大手監査法人より低いです。
給与の高さだけが基準なのであれば、大手監査法人に就職したほうが良いと思います。
中小監査法人の給料が大手より低い理由は、単純にクライアントの規模が小さいからです。
大手監査法人のクライアントのほうがクライアントの規模が大きいため、高単価の報酬が大手監査法人に支払われるのは簡単に想像できると思います。
大手監査法人と中小監査法人の平均的な給与金額を比べてみると、
・大手監査法人:3000シンガポールドル/月
・中小監査法人:2500シンガポールドル/月
となり、500シンガポールドル/月(約38000円/月)ほど差があります。
デメリット2:ブランド力
中小監査法人よりも、大手監査法人のほうがブランド力があります。
その理由としては、監査法人の大きさやクライアントの規模が大きいからでしょう。
例えば、大手監査法人の肩書を持つことは、ブランド力による権威性も高く、クライアントに対する安心感があります。
また、その後の転職するとなった際には、大手監査法人のネームバリューは大きいです。
経歴だけでなく、応募者の中身を検討する会社も増えてきているかと思いますが、その方の履歴書に大手監査法人勤務の経歴があれば、書類選考が通る可能性も高いと思います。
デメリット3:マニュアル、研修
中小監査法人でも、マニュアルはありますし、定期的に研修は行われるのですが、大手監査法人のマニュアルや研修はより充実しています。
大手が充実している理由は、
・世界中に支店を持つほど規模が大きいため、世界中のノウハウが使える。
・研修やマニュアルに使える予算がある。
などが挙げられます。
私が監査法人で仕事していた時、社内に良いマニュアルがない場合は、ネットや書籍を参考にして自分で探したりしていました。
また、ビッグ4監査法人から転職してきたマネージャー(ビッグ4監査法人での勤務年数9年)がいたのですが、とても深い洞察と知識を持った人でした。
私がいたチームにその方がマネージャーとして配属されてから、色々なことを学びました。
実際、中小監査法人の多くはビッグ4監査法人が発表している会計基準に関するニュースレターを参考にしているところも多いです。
デメリット4:その他雑務もある
中小監査法人にいると、大手ではやらないような雑務もやることになります。
具体的には、法人税の計算や決算書の準備など、本来クライアントが行うべき作業をお手伝いしてあげることが多いです。
というか、私が監査法人にいた時は、ほぼ監査法人側でやってました。
これはクライアントの規模には中小が多く、クライアント側でこれらの業務を行う専門知識を持ち合わせていないため、監査法人で準備することになります。
ですが、これらの雑務をお手伝いしていたのは、非上場のクライアントだけでした。
上場企業には、経理部門の体制が整っているので、クライアント側で監査法人側にお願いされる雑務は少なかったです。
もちろん、その分監査は大変でした。笑
その後のキャリア

中小監査法人に就職したとしても、同じ監査法人に留まる人は少ないです。
同じ監査法人にいた私の友人は、主に以下の3つキャリアに進んでいきました。
✔ビッグ4監査法人への転職
✔CFOまたは財務マネージャーとして転職
✔起業、独立
一つずつ紹介していきます。
✔ビッグ4監査法人への転職
監査法人に就職するなら、ビッグ4監査法人に就職したいという方は多いです。
ビッグ4監査法人に転職していった私の友人が語った転職理由は以下の通りでした。
・給料を増やしたい。
・大きいクライアントの監査をやってみたい。
・大企業の監査ができるほどスキルアップしたい。
✔CFOまたは財務マネージャーとして転職
監査法人にいると外部にいながらも、クライアントの会社の全体像を把握できるため、財務面からの運営アドバイスができるほどの知識を得ることができます。
その経験を活かし、企業のCFOや財務マネージャーとして、転職していった友人もいました。
会社の帳簿をつける以上、その国の会計基準に沿ってお金の流れを記録する必要があります。
ですが、会社を運営される社長さんでも会計の知識や経験がなければ、
「この取引はPLに影響が出るのだろうか?」
「このお金のやり取りって会計上問題ないのかな?」
このように疑問が出てきます。
実際、私のもとにも、このような相談が来ます。
つまり、監査法人での経験を活かし、このような疑問に答えて、アドバイスやサポートしてあげることができます。
✔起業、独立
起業や独立をして、自分でサービスを提供するようになるのも可能です。
中小監査法人でも、マネージャークラスまで行くと、サービスの価格、仕事の工数、クライアントの対応、チームマネジメントなど、様々なことを経験します。
なので、私の周りには自分の監査法人を設立して、独立する方もいました。
また、独立は自分の監査法人を設立だけでなく、経理サービスを行うための会社を起業する道もあります。
例えば、上のデメリットでもご紹介した通り、法人税の計算や決算書の作成をできない中小企業は多いです。
つまり、あなたが監査法人にいる間に、これらのサービスを提供できるようになった場合、独立した後に、同じサービスを自分でお客さんに提供できるようになります。
まとめ
最後に本記事の内容をまとめます。
・シンガポール監査法人のランキングでは、トップ4は常に不動のビッグ4監査法人
・中小監査法人に就職するメリットは、
①早い段階で会社という仕組みの全体像を把握できる
②監査の他にも色々なことを経験できる
デメリットは、
①大手監査法人に比べると給与額は低い
②やっぱり大手監査法人のほうが、ブランド力はある
③大手監査法人のほうが、研修やマニュアルが充実している
④中小監査法では、監査以外の雑務も多い
・中小監査法人に就職した後のキャリアには、
①ビッグ4監査法人への転職
②CFOや財務マネージャーとしての転職
③独立や起業
今回は中小監査法人のメリット、デメリットについて解説しました。
メリットの数よりデメリットの数が多いですが、それで大手監査法人より中小監査法人での就職のほうが劣っているというわけではありません。
大切なのは、「自分の目的に合った場所に行くこと」です。
個人的には、あなた自身が納得しているのであれば、大手でも中小でも、どちらでもいいのかなと思います。