

決算書にあるキャッシュフロー計算書(CF)って何だろう?PLとBSに比べてあんまり聞かないけど。。。
海外で働くことに興味があるから、まずはざっくり英語でCFの概要だけでも、分かるようになりたいです。
今回はこんな疑問にお答えします。
本記事の内容は以下の通りとなります。
・【英文会計入門編】キャッシュフロー計算書(CF)について解説
・CFを理解することで会社のお金の出入りが丸見えに
シンガポールで会計に関わる仕事を8年している経験をもとにお話していきます。
※シンガポールの会計基準にそって話を進めていきますので、国際会計基準よりになります。
【英文会計入門編】キャッシュフロー計算書(CF)について解説

まずは、キャッシュフロー計算書の全体像を理解することから始めましょう。
キャッシュフロー計算書は英語で、「Statement of cash flows」と表記されます。
長いので、ここでは「CF」と短縮します。
CFを理解するには、PLとBSを理解しておく必要があるのですが、まだ理解していない場合は以下のリンクからざっくり解説をどうぞ(^_^)
BSの解説:
【英文会計入門】バランスシートの基本を超カンタンに解説
PLの解説:
【英文会計入門】損益計算書(PL)の基本を超カンタンに解説
では早速ですが、ざっくりとCFの全体像と項目をご紹介すると、以下の通りです。

「Total profit」はPLの利益(Profit)から始まり、最終的に決算期末のCash and cash equivalents(現金と現金同等物)の残高に合わせるように計算していきます。
つまり、CFは利益から計算をスタートして、手持ちの現金がゴールになります。
また、実際に決算書で表示されるCFは以下のようになります。


上記のPLは監査法人PwCシンガポールのウェブサイトにある2019年決算書の見本です。
英語ばかりで、混乱されるかと思うので、一つずつ解説していきます。
※以下で表示する例として、PwCシンガポールが出している2019年決算書の見本を使います。
Cash flows from operating activities(営業キャッシュフロー)

本業で得たもしくは使ったお金の動きが営業キャッシュフロー(営業CF)で計算されます。
つまり、営業CFの最終的な数字がプラスであれば、本業で上手くお金を稼いだということ。逆にマイナスであれば、本業でお金を稼げなかった(逆に使ったお金が多かった)ということになります。

営業CFの最終的な数字は、キャッシュフロー計算書のどこを見たらいいの?
この質問の答えは、営業CFの最終的な数字は”Net cash provided by operating activities”になある数字です。

(2019年と2018年のNet cash provided by operating activitiesはそれぞれ77,831、47,978ですね。)
次に、営業CFの構成について解説していきます。
✔Adjustments

Adjustmentsは、「調整」という意味です。
何の調整かと言うと、「現金化しているもの」と「現金化していないもの」の調整です。
現金化とは「実際に現金で受け取ったのか?もしくは支払ったのか?」ということなります。
少し難しいので、具体例を使って説明します。
「Adjustments for」の下にIncome tax expense(法人税)があります。

ここにある法人税はPLに表示される法人税になり、決算書で開示される今期(例:2019年1月~12月)の法人税はまだ確定していないものなので、概算になります(発生主義に基づく)。
PLに表示されている法人税はまだ支払われていないので、現金が減ったわけではありません。
なので、Adjustmentsのところで一旦利益に足し戻されます。
この「現金化しているかどうか?」は会計のルールである発生主義(Accrual basis)に関わっています。
発生主義に関する詳しい内容は、「【英文会計入門】海外で経理として働くための知識を解説」で説明しています。
✔Change in working capital

Change in working capitalは「増加運転資本」という意味です。
ここでは、運転資本の増減を計算します。
運転資本は、以下の式で成り立ちます。
運転資本=流動資産ー流動負債(ただし流動負債からは借入金を除く)
※流動資産、流動負債は「【英文会計入門】バランスシートの基本を超カンタンに解説」で解説しています。

次に、Change in working capitalの下にあるInterest received、Interest paid、Income tax paidです。
まずはそれぞれの意味をご紹介すると、以下の通りです。
・Interest received=実際に受け取った利息
・Interest paid=実際に支払った利息
・Income tax paid=実際に支払った法人税
これは、「実際に受け取ったり、支払った利息や法人税は足される/引かれる」ということになります。
上のAdjustmentsの例でご紹介したIncome tax expense(法人税)を使って確認してみましょう。
発生主義に基づき、支払っていなくても法人税はPLに記録されます。
キャッシュフロー計算書では、実際のお金の動きを表すものなので、まだ支払っていない法人税は一度足し戻されます。(ここまでは上の例で紹介した内容ですね。)
ですが、実際に支払った法人税がある場合(例:去年の法人税)、それは実際にお金が支払われているので、キャッシュフロー計算書では支払った法人税の金額を引きます。
Cash flows from investing activities(投資キャッシュフロー)

投資で得たもしくは使ったお金の動きが投資キャッシュフロー(投資CF)で計算されます。
ざっくり言うと、投資CFの最終的な数字がプラスであれば、投資でお金を稼いだということ。
逆にマイナスであれば、投資をしてお金を使ったということになります。
「投資で得たお金」や「投資をしてお金を使った」という代表的な具体例を見ていきます。
・Acquisition of a subsidiary=子会社の買収
・Disposal of a subsidiary=子会社の売却
・Additions to property, plant and equipment=有形固定資産の購入
・Disposal of property, plant and equipment=有形固定資産の売却
・Purchases of financial assets=金融資産の購入
・Disposal of financial assets=金融資産の売却
・Dividends received=受取配当金
具体例を見て、なんとなくイメージがわいたでしょうか?
上の具体例を集約すると、
・資産を売却して、得た利益。
・資産を売却したけど、売却にかかった費用のほうが大きかったので出た損失。
・保有している株式から得た配当金。
となり、全て「投資に関わるもの」としてまとめることができます。
上の図でいうと、投資CFの金額は2019年、2018年それぞれ2,151と5,543になります。
(「Net cash provided by investing activities」の金額です。)
つまり、2019年、2018年は投資でお金を得たということになります。
Cash flows from financing activities(財務キャッシュフロー)

財務キャッシュフロー(財務CF)には、借金や出資で得たもしくは使ったお金が含まれます。
具体例を見たほうが早いので、財務CFに含まれる代表的な項目を見ていきます。
・Proceeds from issuance of ordinary shares=新株発行で調達した資金
・Proceeds from borrowings=借入金
・Repayment of borrowings=借金の返済
・Interest paid=支払利息
・Dividends paid to equity holders of the Company=株主への配当金
つまり、財務CFで計算されるのは、
・投資家に出資してもらったお金
・借りたお金
・借金を返したお金
・投資家に配当金として支払ったお金
などになります。
上の図でいうと、財務CFの金額は「Net cash used in financing activities」の金額を見ます。
2019年、2018年の金額はそれぞれ(25,919)と(39,535)になります。決算書の数字に()がついているものは「マイナス」という意味です。
つまり、2019年、2018年ともにマイナスなので、「会社はこれだけ投資家に配当金を支払ったり、借金を返しました」ということになります。
今回見た財務CFは、調達金額よりも支払金額のほうが大きかったので、マイナスになりました。
マイナスの時の表記は「used in」になり、プラスの時は「provided by」になります。
今回使用しているPwCの決算書を例でいうと、
・営業CF:Net cash provided by operating activities(プラス)
・投資CF:Net cash provided by investing activities(プラス)
・財務CF:Net cash used in financing activities(マイナス)
ということになります。
最終的なお金の増減

営業、投資、財務CFでの合計(最終的なお金の増減)は「Net increase in cash and cash equivalents」になります。
あとは、以下の調整をして、End of financial year(期末の現金残高)へと計算していきます。
・Beginning of financial year=期首の現金残高
・Effects of currency translation on cash and cash equivalents=外貨の為替調整
「End of financial year」の数字はBSのCash and cash equivalentsと等しくなります。
CFを理解することで会社のお金の出入りが丸見えに

CFを理解することは、「その会社がどうやってお金を作っているのか?どのように使っているのか?」を把握することになります。
・本業での売り上げはちゃんと現金で回収できているのか?
・事業拡大のため、お金を投資しているのか?
・借金の返済はちゃんとされているのか?
黒字倒産という言葉がありますが、これは「利益が出ている会社でも運営資金が足りず倒産してしまうこと」を指します。
PLで利益が出ていることは大切なのですが、実際にお金を回収できていることも大事です。
超ざっくりですが、営業、投資、財務CFがそれぞれプラス、マイナスの時は、会社がどんな状況なのかを考えてみましょう。
【ケース1】
営業CF:プラス
投資CF:マイナス
財務CF:マイナス
→想定できる状況:本業で上手くお金を稼いでいるから、事業拡大のため投資にお金を注ぎ、借金も上手く返せているのかも。
【ケース2】
営業CF:マイナス
投資CF:プラス
財務CF:プラス
→想定できる状況:本業で上手くお金が稼げてないから、追加投資もできず、借金をして足りない資金を補っているのかも。
【ケース3】
営業CF:マイナス
投資CF:マイナス
財務CF:プラス
→想定できる状況:本業では上手くお金を稼げていないけど、お金を借りて、追加投資をしているのは、これから稼げるようになるってことかも。
今紹介した例は超ざっくりなので、「会社で何が起こっているのか?」を詳細に知りたい場合は、決算書の注記を読む必要があります。
ですが、「それぞれのキャッシュフローのプラスなのか?マイナスなのか?」を把握しているだけでも、会社がどんなことでお金を得ていて、どんなことにお金を使っているのかが想像できます。
まとめ
本記事のまとめです。
✔キャッシュフロー計算書は、以下の3つで構成されている。
・営業CF:本業でのお金の出入り
・投資CF:投資でのお金の出入り
・財務CF:借金や出資でのお金の出入り
✔キャッシュフロー計算書を見て、会社の経済状況をイメージできる
多くの方はPLとBSしか確認しないかもしれません。
確かにPLでは売上、費用、利益の金額を把握できますし、BSでは資産や負債の状況を把握できるので、この2つを確認することは大事です。
ですが、PLやBSを見ただけでは分からない会社の背景を、キャッシュフロー計算書で見ることができます。
実際の現金の出入りを数字で表すので、PLやBSに比べるとより正確に会社の経済状況をイメージすることができます。
なので、決算書を理解したい方にとっては、キャッシュフロー計算書を読めるスキルは必須です。